100日間の落下傘 01

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そうやって一定の距離を保ったまま、しばらく歩く。 「……パパは元気?」 まったく話題に出さないのも不自然なので、こちらから尋ねると、周は足を止めて振り返った。 「元気だよ。あゆむ、会ってないの?」 「うん。会ってない」 「ふーん」 彼はふたたび歩き出した。 縁石からマンホールに飛び移ったりと、忙しない。 おそらく彼の中では今「地面を踏まずにどれだけ進めるか」というゲームが進行中なのだろう。 「じゃあ明日、また3人で遊ぼうよ。パパんち行く日だから」 「え、いや……」 「どっか行きたいなー。遊園地行きたい。あ、じゃあ歩も泊まれば!?」 歩は立ち止まり、曖昧に微笑んだ。 「……パパとはしばらく会ってないから、いきなり行ったらびっくりしちゃうよ」 「しねーよ。今、パパに聞いてみる!」 彼はポケットから子ども用のスマートフォンを取り出した。 こちらが慌てて手首を掴んで制止すると、その涼しげな目が見開かれた。 「行けないよ」 「なんで?」 「パパとは喧嘩しちゃったから……」 「仲直りすればいいじゃん」 「そんなに簡単じゃないんだよ」 周は腑に落ちないのか、わざとらしいくらいに首を捻って、踵を返してしまった。 「変なの!」 そしてふたたび、縁石に乗る。 ここはよく抜け道に使われているので、車通りは多い。周の乗り上げた縁石のすぐそばを車が走り抜けていき、冷や冷やした。 「そんなところ乗ったら危ないよ」 「降りてほしければパパと仲直りして! 歩とお泊まり会したいもん」 無茶いうなよ———— 彼はいたずらに背後を振り返っては、わざと車道側にふらつく動作をした。 「周!」 声を上げると、彼はふたたび振り返った。その拍子に重心がぐらつき、彼の体は車道側に大きく傾いた。 彼を支えるために車道に出たのと、クラクションの音が耳たぶにぶつかるような距離で鳴ったのは、ほぼ同時だった。 一瞬のうちに、衝撃や叫び声、ブレーキ音がいっしょくたになって、上空に弾け飛んだ。
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