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耳たぶに口付けてくると、やがて耳の付け根、さらには穴の中にまで、執拗に舌を差し入れてきた。
「あ……」
彼が舌を動かすたびに、唾液や口腔内の音が鳴る。
歩は足の爪先を握ったり開いたりしながら、その焦ったい快楽に身を預けた。
すると彼は耳の穴に入れていた舌を抜いて、代わりに息を吹き込んできた。
「痛くても我慢できる?」
「……できる」
歩はすでに、意識を半分もっていかれていた。
無意識に言い放つと、神楽坂は少し笑って、ふたたび耳打ちをしてきた。
「嘘。絶対に痛くしない」
そして、舌が胸の突起まで降りてきたとき、歩はついに声をあげてしまった。
「あ、や……っ」
舌で突かれたり吸われたりするのが、こんなに気持ちいいだなんて知らなかった。
突起を吸われながら手のひらで脇の下や脇腹を撫でられる。指先が皮膚のあちこちを移動するたび、いちいち腰が浮いた。
神楽坂の頭頂部が間近に迫り、顎に彼の柔らかい髪の毛がふれる。
手がへその周りをなぞり、そのままスウェットパンツを下ろされた。下半身はすでに反応しきっていて、下着の上から触れられただけでも息が漏れてしまう。
「あ……」
神楽坂はなかなか直に触ってくれない。
下着の下にある膨らみを捉え、先端部分を指の腹で擦りながら、こちらの反応を舐めるようにして伺っている。
「下着、汚れちゃうから……っ」
内腿同士を擦り合わせながら身をよじると、神楽坂は下着のウエストを引っ張ってこちらに見せるように空間をつくった。
「糸引いてる」
それを確認した途端、恥ずかしくなり、腕で目元を隠した。
彼の手が、熱をもったそこにようやく絡みついてきた。
「はっ……」
彼はやはり先端を執拗に撫でまわしてから、ゆっくりとしごいてきた。
歩は腕を解き、神楽坂を見た。
彼の舌が身体中を這い、指が絡みついている。
ずっと欲しかった、神楽坂からの愛撫を受けているという、精神的な興奮もあいまって、あっというまに追い込まれてしまった。
「あ……、だめ、すぐいっちゃう……」
彼の手首を掴んでみるが、動きを止められるはずもなかった。絶頂が近くなり、皮膚に爪を立てる。
「いく……っ、あ————」
神楽坂はいつのまにか、目線だけをこちらにずらして、じっと見つめてきた。
見ないでという余裕もなく、眉根を寄せて達した。
放心したまま天井を見つめていると、神楽坂に視界を塞がれた。
「まだ続けて大丈夫?」
間もなく唇をぶつけられて、濃厚なキスをしかけられた。
ただでさえ鈍る思考は、口腔内をねっとりと嬲られているうちに完全にストップしてしまった。
「恭ちゃん……」
このまま、液体になってベッドに染み込んでしまうのではないかというほどに、神楽坂から与えられるキスは濃厚だった。
海原に浮かぶ小舟のように、快楽に揺れ、時折、完全に飲み込まれそうになる。
「好き……」
もうほぼうわ言のようだったが、キスの合間に彼の頬に触れて、改めて告げた。
彼も歩の前髪を横に流しながら額を撫でて、それに応えてくれた。
「俺も大好き」
彼から初めてもらうその言葉は、オブラートのように歩を包囲して、あらゆる雑念を麻痺させた。
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