ドラセナ 01

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「ゆっくりするから……」 「ん……」 発した神楽坂の声も余裕がなかった。 いれるよ、という短い合図のあと、神楽坂自身が、みっちりと体内を満たした。 「うっ……あっ」 彼が丁寧に接してくれたせいか、痛みはそれほどでもなかったが、やはり異物感は相当なものだった。 肩で息をする姿を見たらしい神楽坂は、歩の背中にキスを落としながら、動きを止めた。 「歩、ゆっくり息吐いて」 「ん、ふ……っ」 そう、じょうず。 言われた通りにすると、彼はうなじを舐めてから、小さな子どもを褒めるみたいに言った。 歩のものに手を絡めて扱きながら、神楽坂も小刻みにゆっくりと動いた。 「あ、あっ」 スプリングが軋む。 彼の息が背後で聞こえ、皮膚のぶつかる音が立つ。 神楽坂とセックスをしている。 腰を打ちつけられるたびに、その喜びが杭のようにみちみちと体に埋まっていく。 「恭ちゃん……っ」 振り返ると、彼は歩の求めている通り、キスに応じてくれた。 そして、深くは挿入せずに、入り口付近の粘膜に擦り付けるような動作を繰り返す。 「それ……やっ、気持ちいい……」 体から力が抜け、膝を立てるのがやっとだった。 シーツに顔を押し付けて、体を猫のようにくねらせる。自然と腰を突き出すような姿勢になった。 すると神楽坂はいったん動きを止め、息を吐くと、先ほどよりも深く挿入してきた。 「あぁ……っ」 痛みはない。 彼は先ほど指で確かめていた角度を探してるように、体内をゆっくりとかき回した。 そして一巡すると、次はピンポイントに、少し荒々しく突いてきた。 「あー、あぁ……っ」 歩はシーツに爪を立てた。 指で煽られた時以上の、恐ろしいほどの大波にさらわれそうになる。 身体中が震え、やはり目尻からは涙が溢れるのだった。 「まって! それやだ、へんになる……っ」 快楽の深さも種も、通常で得られるものとはまるで違う。 理性が飲み込まれ、我をすっかりと失いそうな恐怖に覆われてしまう。 しかし、微かな歩の懇願は、激しく揺さぶられるうちに波にさらわれて、やがて見えなくなった。 「はぁ、あっ、あ……っ」 神楽坂の息が、はっはという短いものに変化し、歩もまた、欲望のままに声を上げた。 そしてふたたび前を扱かれて、歩はもう、すっかりわけがわからなかった。 「さわらないで、だめ……ぁっ」 快楽に包囲されて、歩はかつてない絶頂を味わった。 意識が切り離され、体ががどうなってしまったのかはわからない。 「あ、いく——いく……っ」 夢中で叫んだ時、神楽坂の動きも無遠慮なものになり、荒々しく突かれた。そして大きく息を吐いて動きが止まり——彼の唇がふたたび背中をなぞった。 「ぁ、ぁ……————」 その温かな感触で、歩もようやく意識が冴えてきたのだった。 やがて神楽坂が隣りに倒れてきて、どちらからともなく抱き合った。 「……どうしよう」 事後の気怠さが漂うなか、歩から真っ先に出たのは、戸惑いだ。 「なにが?」 「ちょっと……本当にもう、女の子抱けないかも」 神楽坂は目をまんまるく見開いて、それから声を出して笑った。
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