ドラセナ 02

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「あ……」 シャツをたくし上げられ、彼の舌が胸を這う。 今までからは想像できなかった彼の荒々しさに、体が熱くなった。 膝を立てて、神楽坂の下半身を圧迫すると、彼もまた、すでに興奮していた。 「恭ちゃん……」 彼の胸を押して起き上がり、今度はこちらからそっと押し倒した。 歩がなにをしようとしているのか、彼はすでにわかっているようだった。 ボトムスを下にずらしても、抵抗されることはない。 すっかり反応し切ったそこを手のひらで包んで数回扱いてから、口に含んだ。 手がのびてきて——髪の毛をつまむようにして撫でられる。見上げると、彼の目は熱っぽくとろりとしていた。 「歩……」 焦ったように名を呼ばれ、歩はいったん口を離した。 「出そう? 出していいよ……」 「いや、あの……」 首を傾げていると、インターフォンが鳴った。 しばらく黙り込んだままでいると、間をおかずにもう一度。 さらにもう一度———— 「周がね、来ちゃったみたいなんだ」 「え!」 歩が体を起こすと、神楽坂も慌てて身なりを整えた。 「ごめん、忘れてた。今日、来る日だったんだ」 彼は一度、寝室に向かい、しばらくして戻ってくると、着替えらしきものを放ってきた。 それから、ふたたび寝室に行き、焦って片付けをしているような音が聞こえてきた。 おそらく、昨夜の生々しい痕跡を消しているのだろう。その間に、歩も身支度を整えた。 ——やがてドアの開く音がして、周と神楽坂のやりとりが聞こえてきた。 玄関に転がるローファーを見たのか、すさまじい勢いでこちらに向かって走ってくる音がする。 「あー! あゆむー!!」 ドアが開き、こちらを捉えた瞬間、その目が嬉しそうに見開かれた。 「おはよう」 とりあえずソファーに腰掛けていた歩は、立ち上がって手を上げた。 パパと仲直りしたの? なんで朝からいるの? 今日、泊まれる? 周からの質問攻撃にたどたどしくも対応しながら、神楽坂をふと見ると、彼もこちらを見つめながら笑っていた。 そのとき初めて——彼が周に向けるのと同じ種の視線が、自分にも注がれていたことを知った。 「今日のお昼はピザを取りまーす」 神楽坂の一声に、周は歩から体を離して、彼のほうに走っていってしまった。 俺、耳までチーズのやつ! てりやき! 周の騒ぐ声を拾いながら、歩は先ほど彼から受けた視線を、じっくりと噛み締めていた。 いつからだろう。 いつのまに自分は、ずっと欲しかったものを神楽坂からもらっていたのだろう。 ふいに、眼頭が熱くなって、ふたりから顔を背けた。 「あゆむー、なんのピザがいいー?」 周の溌剌とした声が響く。 それを受けて、陽をたっぷりと浴びたドラセナの葉が、かすかに揺れた気がした。 完
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