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ドライブデート 01
自宅からワンブロック離れた広い道路に停車したアウディ。
点滅するウインカーが、今の心境を表しているようだった。
ノーカラーのシャツは襟ぐりにだいぶ余裕があるはずなのに、なぜだか息苦しく感じて、指でつまんだ。
いっそのこと、第一ボタンを外したほうがいいだろうか。
いや、でもせめて服装くらいはきちんとしていないと、釣り合わない————
そんな思いを巡らせていると、運転席のドアが開いた。
よかった。
彼もやっぱり襟付きのシャツを、第一ボタンまで留めている。
神楽坂がこちらに向かって手を振ったとき、歩は一礼しながら歩行速度を上げた。
距離を詰め、挨拶をしようと口を窄めたところで、彼は胸元で両手を合わせた。
そして、声は発さず、口の動きだけでゆっくりと言った。
ご め ん
その意図が掴めずに、対面しても第一声がなかなか出てこない。
首を傾げていると、神楽坂は後部座席の窓を指差した。
ガラスの向こうには、ソワソワと動く、小さな黒い頭が見えた。
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