ドライブデート 01

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周を懐柔するのは容易いことだった。 しかし、特別なことをしたわけではない。 30分ほどゲームに興じていたら、彼の方から一気に距離を縮めてきたのだった。 画面を注視しすぎてやや酔ってしまい、窓を開けた。 周の額を覆っていた前髪がめくれると、思いのほか下がり気味の眉が、冷たそうな雰囲気を払拭した。 最初はゲームの話ばかりだったが、次第に自分のことも話してくれるようになり、着いた時には、彼はもう歩のそばから離れなかった。 「歩、またゲームしよ!」 歩はにっこり笑いながら、神楽坂に目配せをした。 「こら、せっかく遊びに来たのにゲームばっかりしないの」 周は唇を尖らせながら、むっつりと黙り込んだ。 いつものやりとりなのだろう。神楽坂は周の機嫌を伺うこともなく、歩を見て笑った。 「歩、お昼何食べたい?」 歩はカーステレオの時計を見た。 もう12時を回っている。 「俺、パンケーキ!」 こちらが答えるより先に、周が威勢よく答えた。 「えー、またパンケーキ? 前も食べたじゃない」 神楽坂がげんなりした声を出す。 「俺はなんでもいいです。周君の好きなもので」 「じゃあパンケーキね。この前行ったとこ!」 神楽坂ははいはい、と言いながらウインカーを右に出した。 そして、バックミラー越しに、口の動きだけで「ごめんね」と言った。
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