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「歩は子どもで——俺は大人だから。俺は君を導くことなんてできない。しちゃいけないと思ってる」
歩は彼の腹に、すっかり猛った自身を擦り付けた。
彼のそれも、歩ほどではないものの反応している。
「これ、どうすればいい?」
神楽坂の手を取り、自身に当ててみる。
そのうえから自分の手のひらを重ね、操るように動かしてみるが、力が一切込められていない。
手を解くと、彼の手もソファの下へと垂れ下がってしまった。
自ら触れるつもりはない。触れてはいけないという、彼の強い意志をはっきりと感じて——歩は一度、体を離した。
制服のベルトを外し、ボトムスを下げると、神楽坂がはっとしたようにこちらを向いた。
その無防備な瞬間にふたたび唇をぶつけてこじ開けた。
一方的なキスを繰り返しながら、自身に手を伸ばし、ゆっくりと扱く。
「ん…………っ」
歩は、とにかく必死だった。
口を開けてくれないまま、人形のように固まっている神楽坂の歯列をなぞりながら、自ら快楽を追う。
キスの合間にもれる熱い吐息を、神楽坂の下唇や首筋にぶつけてやる。
「恭ちゃん……触ってよ……」
神楽坂はやはり微動だにしない。
しかし、そのまつ毛の茂みから見え隠れする瞳が、いつのまにか歩の体をなぞるようにして動いているのに気づいた。
こちらの手元を執拗に見つめている。
どこか冷淡なその視線を強く感じたとき、体の芯がじんと火照るような、そんな淡い興奮に包まれた。
「はぁ、ぁ……ぁ」
歩は興奮を少しも隠さなかった。
絶頂が近くなって目をつぶっても、神楽坂が視線を注いできていることはわかった。
「あ、出る……でちゃ、うっ」
彼に見られている。
それを意識するだけで、甘く痺れていく。
歩は彼の肩に額を乗せて、快楽に意識を集中させた。
「い、く……っ」
彼の耳に声を差し込みながら、歩は達した。
数回、荒い呼吸を繰り返してから、まだぼんやりする意識のなかで、彼の興奮をさきほどよりもはっきりと、臍のあたりに感じ取った。
歩はそのまま神楽坂の胸に顔をつけた。
「恭ちゃん、本当に触れてくれなかったね」
それならそれで仕方がない。
しかし、このまま引き下がるつもりもなかった。
歩はポケットを弄り、ウェットティッシュで手のひらに付着した体液を拭き取ると、ソファから降りて、すぐ真下のフローリングに膝をついた。
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