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彼の足の間に顔を埋めると、神楽坂の太ももがこわばったのがわかった。
歩はそのまま太ももの内側や付け根にキスを落としていった。
服越しにではあるが、そのたびに彼の体はいちいち跳ねて、躊躇いのような息を漏らした。
そして、手のひらで彼自身にそっと触れてから唇を落とした時、ふたたび肩を掴まれた。
「歩、だめだって」
「恭ちゃんが触れてくれなくても、俺は恭ちゃんに触れたい。一方的に触るだけならいいでしょ?」
神楽坂は首を横に振ったが、歩がふたたび下半身をやんわりと揉みしだくと、息をそっと飲み込んだ。
「好きなんだよ……」
言いながら、彼の返事も待たずにパンツのホックを外した。
ジッパーを下げて、一度下着越しにふれた時、来ると思っていた拒絶の言葉はやってこなかった。
——神楽坂はもう、これ以上ないぐらいに興奮しているようだった。
下着越しに何度か先端を撫でると、先走りで生地が湿った。
それだけで歩は嬉しくて、下着の上から唇を落とした。
キスをするだけでは物足りず、舌で突いたり、なぞり上げていると、神楽坂の熱い息がひとつ、ゆっくりと吐き出された。
「俺、こんなこと、恭ちゃんだからできるんだよ……」
歩は呟きながら、彼の下着を下にずらした。
嫌悪感などはもちろんない。むしろ————
根元を掴んで、ゆっくりと下から上へ、舌でなぞり上げた。
角度を変えて、必死に舌を這わせるが、これで彼が快感を得ているのかはわからなかった。
潔癖な性分のせいで、今までの彼女には、口で奉仕したこともさせたこともなかった。
彼女側から申し出てくれたこともあったが、その後にそのままキスをするのがどうしても嫌で、丁寧に辞退してきたのだ。
しかし要領をまったく掴めずに苦戦している今となっては——一度くらい体験しておくべきだったと思う。
先端を舌で突きながら、ふと不安に駆られて神楽坂を見上げた。
彼は変わらず、声ひとつ出さなかったが、眉間に深くシワを寄せながらこちらを見下ろしていた。
こちらの技量と彼の興奮は、比例していないのかもしれない。
いつも悠然とかまえている彼にこんな顔をさせているのだと思うと、体がむず痒くなるような、深い喜びがやってくるのだった。
唇を開き、口腔内に含んだ。
歯を当てないように慎重に扱くと、口腔内を満たすそれが、かたく硬直していくのがわかった。
歩は焦って、必死で顔を動かした。
「ん、ん……っ」
息苦しさに、思わず声が漏れてしまう。
根元を指で刺激しながら、舌で扱き続けていると、神楽坂からまた、熱くて長い息が吐き出された。
「歩————」
肩を押されたが、歩は意地になって体を離さなかった。
すると彼の身体中が硬直し、やがて苦味が舌先に広がった。
達成感と興奮のままに、そのまま飲み下す。
拳で口角についた唾液を拭っていると、神楽坂がティッシュの箱を差し出してきた。
勧められるがままに一枚抜き取ると、彼はやがて立ち上がり、リビング中央まで進んでしまった。
「口ゆすいでおいで」
声のトーンはいつもと変わらない。
しかし、憤りのようなものを押し殺しているのは感じ取れた。
彼はスマートフォンを手に取ると、廊下へと通じる扉のノブを握った。
「恭ちゃん、俺————」
「タクシー呼ぶから、身支度しておいて」
太ももまで下がったままのボトムスが絡みついてもたつくが、なんとか彼までたどり着くと、背後から抱きついた。
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