TOKYO NIGHT 03

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「歩になにしてんの」 大和の背後で、玄の茶色い髪が揺れたのがうっすらとわかった。 大和が体を起こした隙に、歩はずり下がったボトムスを引き上げて、あらわになった部分を隠した。 「今ちょうど盛り上がり始めたとこ。そっち移る?」 大和はたいして焦りもせずに、奥のソファーベッドを指した。 「なに言ってんの。やんないよ。ちょっと会わせるだけって約束だったでしょ。やりたいならほかに誰か呼べって」 「いーじゃん。久々に付き合ってよ。それとも、で疲れちゃって、プライベートは枯れちゃってんの? 最近、付き合い悪すぎない?」 彼はおどけながら言ったが、玄に肩を掴まれてしまうと、ようやく舌打ちをしながら後ずさった。 歩も、続けて体を起こす。 服が擦れるだけで、所々が熱く火照った。 「歩になんか飲ませた?」 「あー、」 玄はため息を長く吐いて、苛立ちを抑えるようにしばらく目をつぶっていたが、やがてハンガーにかかったコートを取ると、そのひとつを羽織った。 「未成年相手にあんま乱暴なことしてると、知らないよ……」 大和は小さく「はあーい」と言ってから玄に近づき、肩を抱いた。 「またに夢中なんだね」 潜めるような声だったが、こちらまではっきりと聞こえた。 大和を睨みつける錆色の目は怒りを孕んでいて、あまりの凄みに、こちらの身が竦んでしまいそうになった。 「無駄だってわかってんでしょ。こんなとこに連れてきて——歩君、すげービビッてんじゃん」 ふたりの視線が、一斉にこちらに集中した。 その迫力に打ちのめされそうになり、つい俯いてしまった。 「歩、帰ろう」 玄は無言で大和を突き飛ばすと、歩の手を取った。 のろりと腰を上げると、壁に寄りかかりながらにやにやと笑っている大和と目が合った。 「歩君、バイバイ。また遊ぼうね」 肩にかけられたダウンジャケットを胸元で手繰り寄せ、返事もせずに部屋から出た。
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