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「斎賀政海だってぇ!? この美少女が? 嘘だろっ!?」悲鳴に近い声で陽水が叫んだ。
「テメー、コラ。うちの政海をあれだけ泣かせておいて、ちょっと可愛くなったら掌返しやがって! ボケナスが!! 男の風上にもおけねー、このスケコマシヤローが!」
暴言をまき散らし、政海の腕を引っ掴んだ。
「政海っ。こんなクズにフラれたくらいでクヨクヨすんな! 世の中にはもっといい男がいるっ! こんなヤツ相手にする必要ねーって! 帰るぞ!!」
ぐいっと彼女(?)を引き寄せ、邪魔したな、と一言侘びて、大股でカラオケボックスの待合室を去った。ずっとお嬢で通してきたのに、最後の最後でやらかしちまったー、と思い後悔したが、言いたいことが言えないで持ち帰る方がストレスだから、これで良かったのだと怒り任せに思う事にした。
カラオケを出てから、行く当てもなくずんずんずんずん怒りに任せて歩いて行った。ずんずんずんずん歩いているうちに、怒りの熱が冷めてきた。繁華街を一本外れた路地近くにある、小休憩ができるマンションの憩いの場に入り、その場で政海に土下座した。「ごめんっ!!」
怒りは完全に消沈していた。
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