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三人のかくしごと
「ねぇどうして僕にお父さんがいないの?」
翔太が幼い日、祖母にそう尋ねた。祖母はコロコロと笑い、いいものを見せるよとあるものを見せてくれた。それは今、翔太の宝箱の中で眠っている。
翔太が小学三年生の夏、翔太と母の唯は新幹線のホームにいた。祖母のいる東北の実家に帰省するため、新幹線はやぶさを待つ。その最中、唯の心情は穏やかではなかった。
翔太が幼いときに離婚した旦那祐介に翔太を会わせる約束などしたものだから。その舞台が新幹線はやぶさの中なのだ。
はじめは翔太を会わせることを渋った唯だったが、翔太と唯を捨てた男が頭を下げたものだから、つい許してしまった。
だが父であると名乗るなと唯は言い含め、はやぶさの乗車時間の間だけ許すことにした。
ただの通りすがりの男性として翔太に声をかけろと。
翔太はホームを行き交う新幹線に目を輝かせている。やはり男の子なのだなと唯は微笑ましくなる。
乗るべきはやぶさが駅のホームに止まり、唯と翔太ははやぶさへと乗り込んだ。
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