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「犯罪になる事が悪だ。犯罪にならなくとも、道徳に反する事も悪なのだろう。しかし、道徳に反する事を全て把握している訳ではない」
「…そうか、俺がこれから教えていくよ」
竜二は何とも言えない笑顔を浮かべ、美玲の頭を優しく撫でた。
「うむ。よろしく頼むぞ」
それから二週間後。
美玲は無事病院を退院した。
「平山竜二、私は大学に復学しようと思う」
家のリビングでくつろいでいる中、美玲は口を開いた。
「そうか、もう体は大丈夫なのか?」
「大丈夫だ。痛みもなければ、体も重くない。悲しみは吹き飛んだようだ」
「なら大丈夫だな。いつから行くんだ?」
「大学に今日電話する。しかし、私は明日から大学に行くつもりだ。私は勉強しなければならないからな」
その日の内に大学に復学の要請をした美玲は、次の日大学に向かった。
午前の講義を終え、美玲は学食に来ていた。
「いただきます」
カツカレーを目の前に、美玲は両手を合わせた。
「あれ?美玲、妊娠中なのに大学に来たの?」
榊原茜はラーメンが載ったトレイをテーブルに置き、美玲の向かいの席に座った。
「私の腹の中の胎児は、産まれてはこない。何故なら死んだからだ」
そう言った美玲は、体が重くなるような感覚に襲われた。
「…そうなんだ…美玲、元気だしてね」
茜は大好きな美玲に起こった悲劇に悲しみ、泣きそうな顔をしている。
「私は病気ではない。怪我はしたが回復傾向にある。しかし、悲しみを覚えた私の体は、今重くなっている」
口を閉じた美玲の瞳から、透き通る一筋の涙が零れ、頬を伝った。
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