芽生えた感情

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「えっ?美玲、泣いてるの!?」  美玲が感情を持たない事を知っている茜は、目を見開き、驚いている様子だ。 「私は悲しみを覚えたのだ。体が重く涙が出るのは、悲しんでいる証拠だ。私はそれを学習済みだ」 「美玲!感情が芽生えたんだね!私嬉しい!」  茜はテーブルに体を乗り出し、目を潤ませた。 「嬉しいとは、喜んでいるという事だな。榊原茜と私は、友人関係にある。友が喜んでいるという事は、私に感情が芽生えた事は、喜ばしい事なんだな?」 「そう!喜ばしい事だよ!」  茜は笑顔で手を差し出した。 「この手は何だ?」  美玲は無表情で首を傾げた。 「こういう時は握手するんだよ!」 「うむ、そうか」  美玲は差し出された茜の手を取り、握手を交わした。  午後の講義を終え、茜は一人暮らしをするアパートに帰って来た。 『大好きな美玲に感情が芽生えた。赤ちゃんが死んだ事は凄く悲しい。平山竜二が死んでくれたら良かったのに。あの男がいる限り、美玲は幸せになれない。美玲は私が幸せにするの。美玲、二人で未来を築いて行こうね』  茜はペンを置くと、日記を閉じた。 「…いいか美玲、人だけじゃなくて動物を殺す事も悪い事だぞ」  夕飯を食べ終え、コーヒーを片手に竜二は口を開いた。 「動物を殺す事は悪い事なんだな。しかしそれでは、人間は悪い事を行っている事になるぞ。人間は豚や牛や鶏を食べる為に殺しているだろう。人間とは悪なのか?」  美玲は理解しがたいとばかりに首を捻った。 「食べる為に動物を殺すのは悪い事じゃない。人間は動物を食べるだろ?生きる為に殺すのは悪じゃないんだよ」  竜二は分かりやすいように、身振り手振りをしながら、美玲に伝えた。
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