50人が本棚に入れています
本棚に追加
「えっ?美玲、泣いてるの!?」
美玲が感情を持たない事を知っている茜は、目を見開き、驚いている様子だ。
「私は悲しみを覚えたのだ。体が重く涙が出るのは、悲しんでいる証拠だ。私はそれを学習済みだ」
「美玲!感情が芽生えたんだね!私嬉しい!」
茜はテーブルに体を乗り出し、目を潤ませた。
「嬉しいとは、喜んでいるという事だな。榊原茜と私は、友人関係にある。友が喜んでいるという事は、私に感情が芽生えた事は、喜ばしい事なんだな?」
「そう!喜ばしい事だよ!」
茜は笑顔で手を差し出した。
「この手は何だ?」
美玲は無表情で首を傾げた。
「こういう時は握手するんだよ!」
「うむ、そうか」
美玲は差し出された茜の手を取り、握手を交わした。
午後の講義を終え、茜は一人暮らしをするアパートに帰って来た。
『大好きな美玲に感情が芽生えた。赤ちゃんが死んだ事は凄く悲しい。平山竜二が死んでくれたら良かったのに。あの男がいる限り、美玲は幸せになれない。美玲は私が幸せにするの。美玲、二人で未来を築いて行こうね』
茜はペンを置くと、日記を閉じた。
「…いいか美玲、人だけじゃなくて動物を殺す事も悪い事だぞ」
夕飯を食べ終え、コーヒーを片手に竜二は口を開いた。
「動物を殺す事は悪い事なんだな。しかしそれでは、人間は悪い事を行っている事になるぞ。人間は豚や牛や鶏を食べる為に殺しているだろう。人間とは悪なのか?」
美玲は理解しがたいとばかりに首を捻った。
「食べる為に動物を殺すのは悪い事じゃない。人間は動物を食べるだろ?生きる為に殺すのは悪じゃないんだよ」
竜二は分かりやすいように、身振り手振りをしながら、美玲に伝えた。
最初のコメントを投稿しよう!