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「そうか。私は平山竜二の身に何かあったのかと思い、連絡を待つ為に起きていたのだ。しかし、何事もなかったようだな」
美玲はそう言うと、無表情のまま欠伸を掻いた。
「…美玲、ごめん」
竜二は罪悪感に包まれた。
「フィアンセというものなら、そうすると思ったのだ。最近私は学習していなくても、自ら考え、行動するようになったのだ。これも日々学習しているおかげだな」
「…そうだな…美玲、寝てないなら眠いだろ?寝ていいよ」
竜二は、美玲から顔を背けて呟いた。
「あぁ、寝てくる」
美玲は立ち尽くす竜二の横を通り過ぎると、寝室に向かった。
「おやすみ」
ベッドに入り、誰に言うでも無く、美玲は一人呟いた。
次の日、美玲と竜二がリビングで昼食を取っていると、電話が鳴った。
「もしもし、平山ですが…お義母さんですか…えっ?…すいません、美玲が報告していると思っていたので…すいません、今変わります」
受話器を置いた竜二は複雑な表情をして、美玲に駆け寄った。
「…美玲、お義母さんから電話だよ」
「うむ」
席を立ち、美玲は受話器を握り締めた。
「美玲だが、何か用か?」
「…美玲、事故にあったんだって…何で教えてくれなかったの?」
母親の里美の涙声が、受話器から伝わってくる。
「教えないといけなかったのか?知らなかった。しかし、学習した。次からは母に報告しよう」
「うん…赤ちゃん残念だったね」
「胎児は死んだ。しかし母に報告する事がある。私は胎児が死に、涙を流したのだ。悲しみの感情を手に入れた」
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