芽生えた感情

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 サングラスを掛けている為、目の動きは分からないが、男はキョロキョロと辺りを見回しながら歩いている。端から見れば、不審者と思う者もいるかもしれない。  男の様子に、茜の興味は益々高まっていった。  男が急に立ち止まった。男は顔を動かしていない。茜は男が見ているであろう、視線の先を追った。  店があった。誰もが知っているハンバーガーを販売しているチェーン店だ。店の一階の窓際の席で、ハンバーガーを頬張る、一人の若い女の姿が目に入った。それ以外、取り分けて目を引くものはない。男はその女を見ているのだろう。  男は自分の顎を指先で掴んだ。人が物事を考える時にやるような仕草だ。  答えが出たのだろう。男は一人頷くと、ハンバーガーショップに背を向け、向かいにあるコンビニに足を向けた。  コンビニに入った男は、直ぐに道路に面した窓際に設置されている雑誌コーナーへと向かった。そして雑誌を手に取ると、胸の辺りで広げた。  その様子を茜は外から窺っている。  男の顔は広げた雑誌に向いているが、サングラスの奥の瞳は、先程の女性を凝視している。茜はそう思った。 「…何が起きるんだろう」  茜は高鳴る鼓動を抑え付け、一人呟いた。  暫くすると、ハンバーガーショップからあの女性が出て来た。茜はそれに気付くと、再び視線を男に向けた。男はコンビニから出て来るところだった。  男はコンビニを出ると、一定の距離を保ちながら女性の後をつけて行く。茜は笑顔を浮かべ、男の後をつけた。  女は本屋に立ち寄った後、駅に向かい電車に乗った。混雑している電車の中で、男は女の後ろに立ち、女から発せられる匂いを存分に楽しんでいる。茜は二人から少し離れ、その様子を観察している。  電車に乗り三十分程すると、女は電車を降りた。女の様子から見て、男に気付いていない様子だ。
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