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最後の贈り物
そんな物悲しい秋のある日、病院の母から一通の手紙と、針を抜いた注射器が二つ送られてきた。
手紙にはこう書いてあった。
「剛、順二、お母さん、今必死で病気と闘っています。みんなに会えないのは辛いけど、早く病気を治して、うちに帰れる日がくるまで、頑張って病気と闘っていくからね。
ごめんね、剛、順二、寂しい思いをさせちゃって。けれど心配しないで。お母さん、きっと良くなるから。それまで、ちゃんとお父さんの言うことを聞いてね。
お母さんがあげられるのは、こんなものしかないけれど、お風呂でおもちゃとして使ってください。お母さん、頑張るからね」
この手紙と注射器は母からの最後のプレゼントとなった。
彼は手紙を何度も何度も読み返しては涙があふれた。
涙でくしゃくしゃになってしまった手紙だが、今でも大切にしまってある。
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