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突然告げられた父の再婚
それはあまりに突然の出来事だった。
今まで男手一つで彼と順二を育てあげて来た父が再婚すると言うのだ。
ある日、一度も会ったことが無い人なのに、急に父が
「今日から、この人がお前達の新しいお母さんだ」
と言って来た。
父のとなりには気が強そうな女性と、小さな女の子が立っていた。
びっくりも何も、
(今まであったことも無い人が、今日から僕のお母さん)
彼は何がなんだか、訳がわからなかった。
後々、なんとなくわかってきたが、はじめから再婚相手の母を彼と順二に合わせなかったのには意味があった。
要するに、彼の父は息子達の幸せより、自分の幸せを優先したのだろう。そうであれば自身の再婚を、多少なりとも邪魔や反対される可能性の有る息子達に知らせるはずもない。
父に
「今日から、この人がお前達の新しいお母さんだ」
と紹介されたその人と横には連れ子らしい小さな女の子が立っていた。
「始めまして、これからよろしくね」
新しい母は、じっと彼と順二を見ながら力強い眼光でちょこんと頭を下げた。
「どうも始めまして、こちらこそよろしくお願いします」
彼と順二もぎこちなく挨拶を交わした。
(なんだか、怖そうな人)
信じ難いが、これが彼と新しい母との出会いだ。
この新しい母との出会いで、彼の人生はさらに辛い道を歩むこととなった。
新しい母に挨拶された日はその挨拶だけで終わり、新しい母と連れ子の女の子はまた自分達の住んでいる住居へと帰っていった。
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