悲しみの先へ

新しい家族

　結婚式が終わり何日かしてから、新しい母と、新しい妹は僕たちの家で本格的に一緒に生活をするようになった。

　彼は母を亡くしてから、その寂しさや、離れて行った友達達の姿を経験し、内にこもる性格になっていた。
順二も同じように随分と大人しい性格になっていた。

　それに今まで家族三人で暮らしてきたから、新しい家族というものに戸惑いがあり、何を話していいかもわからず無口になるのもしごく当然のことだろう。

　そんなこんなだから、新しい母が家に来てからも、あまり会話らしい会話はなかった。

　会話と言えば　

「おはようございます」
「行ってきます」
「ただいま」
「いただきます」
「ごちそう様」
「おやすみなさい」

　等、事務的な挨拶くらい。

　父も前に

　「新しいお母さんが来てからも、今までどおり普通にしていていい」

と言ってくれたこともあったし、彼も順二も、元来無口な性格だったから、こんな感じだった。

　それでもそれなりに新しい家族は何とかなっていた。

　新しい妹のひろみちゃんは結構活発な子で、家族団らん、食事の時間などは、よくいろいろとしゃべっていた。学校のことや、友達のこととか。　
　父も新しいお母さんも笑って聞いていたが、彼と順二は黙々と食事をしているって感じだった。

　「新しい家族ってこんな感じなのかな」

　彼もそのときはそう簡単に思っていたんだけど、それはとんでもなかった。