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こんなの家族なんかじゃない
そんなことがあってから毎日が大変だった。
家族と言う形としては存在はしてるものの、彼と順二は必要とされてない。
親が子供に対して愛情が無いと言う事実。
自分を必要としてくれる人も、愛してくれる人もいない辛さとはどれほどのものなのだろうか。
こんな感じで、彼は自分を必要としていない家族から今すぐ逃げ出したかった。
だが彼は逃げ出さなかった。
父には、彼に対する愛情が無いというもわかったし、継母も、彼や順二を邪魔扱いしてるのもわかったけど、彼は逃げ出さなかった。
彼は大人しくもあり負けず嫌いな面もあった。
父にも、継母にも腹を立てて仕方なかったけれど、こう思った。
(血がつながっていようといまいと、子供を成人になるまで育てるのが親の役目だろう。未成年の子は親に育ててもらう義務があるんだからな)
意地だった。
彼が唯一こんなとんでもない家庭の中から逃げ出さ無かったのはそれが主な理由だったが、未成年の彼には経済力も無いことと、生活力も無いことだから逃げ出したくても逃げ出せなかったと言うのもある。
あとは弟順二の存在だろう。
このまま彼がこの家から出て行ってしまえば、弟一人が残されてかわいそうな思いをさせてしまう。
だから居心地の悪い空間であっても簡単には出て行けなかった。
それからも毎日のように、継母や父ともケンカばかりだった。
あの伊豆の旅行の説教以来、継母も父も彼等を恫喝することが増えていった。
「お前ら本当に何回言えばわかるんだ」
「あんたたちは一体何考えてるの」
「お前達がいると家族の空気が重いんだよ」
「私は血が繋がってないから、あなた達のことを本当の息子だとは思っていないから。あなた達もきっとそう思ってるんでしょ」
「お前達もお母さんの言うことが聞けないならば、出て行くがいい」
こんな感じだった。
ただ彼も負けず嫌いの性格が手伝ってか、そんな父と継母とは戦い続けた。
「うるさいんだよ」
「お父さんもいい加減に目を覚ませよ。今までのお父さんに戻ってくれよ」
「俺たちの何処がむかつくんだよ。むかついてんのはこっちの方だからな」
なんて具合で。
そんなやり取りを順二はいつも黙って聞いているだけだった。
そんなこんなを繰り返しているうちに、彼も高校生になった。
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