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あの子は何度も現れる
わたしは何度もあの子と会った。何度もそう何度もあの子がわたしの目の前に現れた。
「お姉ちゃん」とわたしのことをあの子は呼んだ。いつもぼんやりと何も考えず一人で歩いていると目の前に突然現れる。
あの子と初めて会ったのはわたしが小学生の時だった。お気に入りの赤色のランドセルを背負ったわたしは真夏の日差しの中をハンカチで汗を拭きながら歩いていた。
蝉の鳴き声がミーンミーンミーンと鳴いてうるさい。もうどうしてこんなにうるさいのよ。なんてぶつくさ文句を言っていたその時、
「ねえ、お姉ちゃん」と声が聞こえてきた。
わたしのことをお姉ちゃんと呼ぶ人なんていない。だって、わたしはひとりっ子なのだから。だが、その声はもう一度「お姉ちゃん」と呼んだ。
どうやらわたしに声をかけているみたいなので後ろを振り向くと女の子が立っていた。
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