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帰来島の近くに来ると、結鬼達の気配がする。恐らく、紅砂たち以外の結鬼も集結しているのかもしれない。
ザンはその気配を辿り、溶岩石が見える岩山に向かった。
白いコートの裾をはためかせながら地上に降り立つ。
この辺に誰か居ることは分かる。相手もザンの気配に気付いて身を隠し、様子を見ているのだろうか。
ザンは歩き始めた。紅砂たちの仲間なら、自分を見たなら姿を現してくれるだろう。しかし、一向に現れないところをみると、紅砂達とは関係のない奴なのかもしれない。
ザンは警戒心を強めた。
岩場を過ぎ、木々が覆い繁る森へと足を踏み入れた時、右から鋭い刃が飛んできた。
ザンは身を翻し、側にあった木に身を隠した。そして、一気に刃が飛んできた方向へと走り出した。
「結構な挨拶だな」
瞬時に相手を見付けると、お返しとばかりに相手の首めがけて手刀を放った。だが、相手の首に刺さる前に、相手に腕を掴まれ停止する。ザンは間髪入れずに、相手の腹をめがけて内蔵を抉った。
「ぐおっ!」
と言って、相手は血泡を吐いた。
「てめえ……やりやがったな!名はなんという?」
「ザン」
と、答えながら、ザンは腹に刺した腕を、相手の心臓にまで移動させた。
「やめろ!」
と言って、相手はその腕を両手で押さえた。そして、そのままザンに向かって頭突きをする。互いの頭蓋骨が割れたような鈍い音がしたが、そこは高位結鬼。すぐに再生をする。そして、その瞬間、ザンの腕が離れた。
「ザンとか言ったな。お前……かなりの能力だな」
「それはお前もだろ?名前は?」
「ルイだ」
ルイは少し楽しそうに口角を緩めた。
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