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ザンとルイは暫くの間、空中戦に没頭していた。
辺りは暗くなり、空には星が瞬き初めた。
「なんだよ、あいつらほぼ互角に戦ってるよ。勝負はつくのかなあ」
遠目から様子を見ていたスティーブが、飽き飽きした顔で呟いた。
「共倒れしてくれたら、平和でいいんだが」
サイモンの言葉に、スティーブは「まあ、きっとそうはいかんだろう。俺達で勝負をつけさせてやろうか?」と言った。
サイモンは神妙な顔をして、「俺達で、とは?」と訊いた。
「どっちかに加勢してやろうぜ。どっちがいいと思う?」
「そうだな……白い奴はあのキリルとかいう人間で、俺達に恨みを持ってそうだしなあ」
「だが、あの黒髪の男は得体が知れない。助けたところで、俺達に攻撃しないとも限らない。だから、ここはあの白い方に加勢して、恩でも売っておくか」
「恩ねぇ……。ベンみたいな奴だったら、加勢すると余計にキレ出すからな。それで恩が売れるとも限らないぞ」
「そんときはそんときさ。行くぞ!」
「いや、待て!!」
サイモンがスティーブの動きを止めた。
ザンとルイに近付く、四鵬の姿を認めたからだ。
「あの兄ちゃん。加勢するつもりか?」
「結鬼の出来損ないの癖によくやる」
「どうする?」
「様子を見よう」
スティーブとサイモンは四鵬の動きに集中した。高位結鬼同士の戦いに乱入しようなどと、度胸だけは認める。だが、結果はどうせ無理だと二人は踏んでいた。
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