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「どうなっているんだ?!傷口が……再生しないっ……?!」
四鵬の持つ刀には、奏閻の開発した対高位結鬼用の薬品が塗られていたのだ。
その隙を突いてザンが頭上から止めを刺しに来る。ルイは間一髪でそれを避けた。
「くそっ!」
胴体を押さえながら、藪の中へと身を隠す。傷口は何とか塞がったが、じくじくとした鈍い痛みが走る度に響いてくる。細胞の芯から再生と同時に壊されていくようか感覚がした。
ザンが後ろから追って来ている。もっと早く走らなければ危険だ。
そして、ルイが後ろを気にしながら走っていた時だった。前方から、何者かの気配がした。高位結鬼の気配ではないので、ルイは人間か先ほどの刀を持った出来損ないの結鬼の仲間かと思った。いずれにしろ、大した力もない存在なので、盾にでもしようかと、その気配に近付いた。すると、身に覚えのある女がいた。
「美和?!」
思わず声に出してみたが、どうやら様子が変だ。美和ではない。そして、美和らしき女の側に居るのは、ルイが腹を裂いて海に突き落としたはずの紅砂だった。
「そうか!その女が美和と同じ、結鬼の女か!」
ルイが残忍な笑顔を溢した。卯月を見た瞬間に、何かを思い付いたらしい。
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