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「なら、尚更今のうちに何とかしないと駄目だろ」  そう言ってザンは彼らの元へ歩いて行った。  サイモンは肩を竦めた。言っても無駄な奴には無駄な事だ。サイモンはサイモンで当初の準備に取りかかる。    ザンが近寄ると、直ぐに美和が気付いた。 「嘘……すごい!アルビノの結鬼なの?!」  美和はザンの美しさに見惚れた。ルイを押し退け、直ぐに立ち上がると、妖艶に腰を振りながら近付いた。全裸の、それも所々、血を流した美和の肢体は、妖しい香りを放ち、ザンを魅了しに取りかかる。だが、それを良しとしないのがルイであった。 「どこに行くんだ、美和?」  美和の腕を掴み、自分の方へ引き寄せる。 「他の男に色目を使うんじゃねぇ!」 「ほっといてよ。あんたの番はもう終わり。あたし、この男が欲しい」  その言葉を聞いた瞬間、ルイは豹変した。美和の髪を引っ張り、床に引き倒すと、足で腹を踏みつけた。  美和は血泡を吐いた。腹は完全に踏み潰されていた。続けてルイはまた美和の髪を掴んで、後ろに放り投げた。  岩に体を打ち付けた美和の体は、四肢を変な方向にねじ曲げながら、崩れ折れた。 「よお、ザンとか言ったな。もう一度、勝負だ。今度はさっきと同じようにはいかねえぞ」  ここに入る前より、心なしかどす黒く変色したようなルイの顔色に、不気味さを感じながら、ザンは身構えた。確かに、以前とは違うような気がする。  ルイが一歩前へ出た。と、次の瞬間。ルイの手刀がザンの目を突いた。
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