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 首を絞められることで、着々と顔が土気色になるルイ。  ザンは下から首を絞めながら、少しずつルイを押し上げる。何とか身を起こし、漸く片膝を付けるほどに起き上がると、ルイの首を締めたまま壁に向かって激突させた。  このままザンが優勢かと思いきや、ルイは激突の衝撃で血泡を吐きながらも、足でザンの腹を蹴った。ザンの手が緩む。その隙を見逃さず、ルイはザンの手から逃れた。  二人ともゼイゼイと息を荒げながら、互いの距離を図る。  緊迫感のある二人の間で、白い肢体が動き出した。美和だ。 「痛い~!痛いじゃないのよ!ルイ!!」  そう言って、美和は自分の足元にあった石をルイに投げつけた。だが、ルイはどこ吹く風。美和のことなど目に入らない様子で、ザンに集中していた。  そんなルイの様子を見て、腹を立てた美和が、ルイに向かってぐいぐいと進み始めた時、岩場の割れ目から、数人の人影がすり抜けて来た。 「あ!」  と思わず声を漏らしたのは美和だ。  ザンとルイもやって来た人影に目をやる。  彼らの前に現れたのは、卯月を中心とした紅砂とコンラッドだった。 「飛んで火に入るなんとやら、ってやつね」  美和が楽しげに舌舐めずりをする。
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