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「生意気言ってんじゃないわよ!!あんた、あたしに喧嘩売ったわね!」
美和が前に乗り出し、いきなり卯月の頬を叩いた。
卯月は突然の事に驚いていたが、直ぐに身を正し、毅然とした面持ちで、美和を睨み返す。
「何が気に入らないのか知らないけど、憂さ晴らしなら、みんなを巻き込まないで、私にしなさい!叩くなら、いくらでも叩きなさい!刺したっていいわ!但し、みんなには手を出さないで!!」
「ふざけんじゃないわよ!あんたをいたぶったって死にはしないんだから、面白くもなんともないのよ!ねぇ、ルイ?この女をいたぶるより、あなたはみんなを痛め付けて、吸収してしまった方がいいと思うわよね?」
美和の囁きに反応するように、ルイが背後から起き上がった。
「ああ、全員喰って、喰って、喰いつくしてやる!!」
ルイが一歩前に出た。そして、卯月に手を出すかのように見せつけて、突然、跳躍した。始めは誰もがこの見当違いの動きに、何の意味があるのか分からなかった。しかし、次の瞬間、その場に居る誰もが戦慄し、その意味を理解した。
「グハッ!!」
と、苦鳴を上げながら、身体を折り曲げ倒れたのはサイモンだった。
美和とルイを生き埋めにするべく、何か策を立てていたサイモンの存在に、ルイは気付いていたのだ。
「先ずはお前らとは仲間意識の薄いこいつから頂くとしよう」
ルイはそう言って、サイモンの首にかじりついた。
「待て!!」
声と共にルイに飛びかかったのは、ずっと高みの見物を決め込んでいたスティーブだ。
ルイの首に腕を回し、サイモンから引き離す。
「加勢する!」
紅砂も加わり、ルイからサイモンを見事引き離した。
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