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「貴様!!よくも邪魔しやがって!!」  ルイは背後のスティーブを床に投げ飛ばすと、今度はスティーブの喉に牙を突き立てた。 「スティーブ!!」  サイモンが助け出そうと、二人に近付いたが、ルイの前蹴りで、後ろにいた紅砂もろとも吹っ飛ばした。 「くそっ!止めろ!!」  スティーブはもがきながら、ルイにパンチを加えていたが、血を吸われながらでは、もうどうしようもなかった。だが、その時、ルイの牙が緩む事態が起きた。  いつの間にか卯月がルイに近付き、その頬に触れた。ルイは何故だが、電撃に打たれたかのように身体を震わせると、スティーブを放した。 「な、なんだ、お前は?!なんのつもりだ?!」  卯月は静かにルイを見つめた。 「あなたも私の血を吸ってみませんか? そんなに怯えて、怒りに悶えるより、安寧と真の繁栄を願う心を持ってみたいと思いませんか?」  その言葉を聞いて、大声で笑いだしたのは美和だ。 「馬鹿じゃないの、あんた? そんなもの、ルイが欲しいと思うわけないじゃない。ねえ、ルイ?」 「ああ、言っている意味が分からん」 「そうですか……」  卯月は残念そうに目を伏せると、今度はスティーブに向き直った。 「あなたはどう思われますか?」  スティーブはそこはかとない圧力を卯月に感じていた。  ほんの僅かな間、卯月と離れていただけなのに、まるで違う女に見える。
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