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次に当てられたのは、よしみという名前の生徒だ。いつきと同じくらいのショートカットでむつよりも暗めの茶髪。短くまとめられた左のサイドテールが特徴的な生徒だ。
よしみ「好きな有名人は誰ですか?」
さえ「好きな有名人かぁ・・・声優さんになるけど、戸田めぐみさんかな。」
千覇「うーん、好きっていうより尊敬してる人になるけど、メイジンカトウかな。」
みんなの顔が横に傾く。メイジンカトウという名前に心当たりがないからだろう。まあ、当然と言えば当然だ。その手の界隈では有名なのだが、表にはあまり出ない人物なのだ。
千覇「メイジンカトウっていう人のは、書道家の人なんだ。この世界では有名な人で、ここ数年は主催の書道コンクールを行ってるよ。去年は確か・・・27000点の応募があったはず。」
確か、一時期ニュースに取り上げられたはずだけど、興味ない人にとっては、そんなことあったねぇくらいの物なのだろう。千覇も毎年コンクールには作品を応募している。応募するきっかけは、父親の影響だ。父親が新年の書初めをする姿を幼い時から見ていた千覇は、いつしか筆を持つようになり、父の勧めで応募した書道コンクールで金賞を取ったことがきっかけで、毎年コンクールに応募するようになった。ここ二年では、意味が違ってきているが、それは伝えることじゃない。
担任「残りはあなたたちね…じゃあ、渡辺さん。」
「ヨーソロー!渡辺曜であります!」
次々に先生が生徒を当て、さえと千覇は答えていき、残り二人になった。先生が当てたのは、アッシュグレーのボブカットでウェーブの入った髪をしている生徒だ。元気よく返事と敬礼をして立ち上がる。
曜「二人の趣味はなんですか!」
さえ「面白いこと(悪戯)も好きだけど、一人の時はよく絵を描いてるよ。」
千覇「俺は自己紹介のときに言わなかったけど、ゲームは好きだよ。」
さえ「最近だと何だっけ?CoD?」
千覇「(ポカーンとしてる子がいるな・・・)簡単に言えば、銃で人を倒すゲームだと思ってくれ。色んなゲームをやってる雑食系だから、おすすめとかあったら教えてくれると助かるよ。」
ほのぼの系のゲームにはあまり手を出してこなかった千覇にとって、新規の動画ネタが手に入るかもしれないという思惑もある。女性視聴者が多いので、ここで得られる情報は貴重だ。幸のいない間に少しでもネタのストックを作っておかないと、留学から帰ってきたときに困るだろうと考えたからだ。
担任「よし、最後は高海さんね。」
「もう!なんで私が一番最後なの!佐藤ちゃんひどい!!」
担任(佐藤)「どこでも変わらないでしょ・・・。結局うるさいんだから。早く質問しなさい。時間ないわよ?あと、先生ね?」ニコッ
「うぇ!?えーと、高海千歌です!」
高海千歌と名乗る生徒は、みかん色の髪の毛に紅い瞳、左側頭部に三つ編みをしていて黄色のリボンを三つ編みの先につけている。右の髪に三つ葉の髪留めをしている。そして、目を引くアホ毛。
千歌「二人はスクールアイドル知ってますか!」
千歌の質問に千覇は顔をしかめかけた。幸には警告を受けていたが、まさか初日にこんなことを聞かれるなんて考えておらず、油断していた。流石は今を華やかにする存在の一つという事だろう。
さえ「知ってるよ。人並程度だけどね。」
千覇「……俺はそこまで知らないかな。」
あまり深入りはしないようにするために千覇は嘘をついた。下手な回答をすれば、クラスのみんなに迷惑をかけることになるかもしれないと思ったからだ。
―――スクールアイドルには、関わりたくない―――
今の千覇が生まれた瞬間に決めたことだ。だから、これは仕方のない嘘なんだ。
千歌の質問に答えるとチャイムが鳴った。そのまま帰りの会が始まる。千覇は席に座り担任の話を聞く。が、話を聞くことよりも、他のことを考えていた。千覇の席は千歌の前の席、先程の質問のことを踏まえれば、この先、スクールアイドルの話題が出るのは必至。席を変えてもらうか、意識をそらすか。いずれにいろ、何か行動をしないといけないが、
千覇「(あまり下手な行動は孤立を招くし、それはそれで面倒か。)」
編入早々にクラスから孤立するのは不味い。幸には、孤立しないようサポートするといった手前、千覇自身が孤立しては元も子の無い。今は耐え忍ぶしかない、と千覇は決めた。大丈夫、安地の取り合いで漁夫狙いで慣れたことだ。今更苦ではないはずだ。
帰りの会が終わり、千覇が帰り支度をしていると、先に支度の終わったさえが近づいてきた。
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