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何となく手に取ってくれたのか、僕の本だから手に取ってくれたのか……それは分からないけど、興味を持って買ってくれたら嬉しいなと思った。
そんなことを考えていたら、同じく学ラン姿の男の子が彼の元へ歩み寄る。
「光理、欲しい小説見つかった?」
丸い目をした男の子がそう尋ねると、光理と呼ばれた彼が「うん。買ってくる」と答えた。
たまたま手に取ったわけじゃなくて、僕の小説を買うために本屋に来たのか。それは本当に嬉しい。
でもそれ以上に、今の会話で気になることがあった。
ーー光理って名前、どこかで聞き覚えがあるような。
「ほんと光理って、何でそんな活字の本ばっかり読めるのー?」
「小説面白いじゃん。悠理も読んでみろよ」
「俺は漫画の方がいいよー。父さんも母さんも、藤海家は誰も活字の本読まないのに、光理は誰に似たんだろうねぇー」
……藤海?
藤海 光理……。
そうだ。最近よく手紙をくれる、読者の男の子だ!
確か年齢が中学生で、住所も都内だったような気がする。そうか、あの子がそうなのか。
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