一夜限りの、温かさ。

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「さすがにここまで来れば、もう大丈夫かな」 息を切らしながら、男性がそう言う。 さっきまで、あの男たちがヤバい形相で追いかけてきていたけれど、しばらく走り続けて何とか撒いたようだ。 安心感で脱力して、薄暗い路地裏にぺたりとしゃがみ込んだ。 「怖かった……」 俺がそう呟くと、助けてくれた男性もゆっくりと腰をおろし、目線を合わせてくれる。 「もう大丈夫だよ」 優しい声で、そう言ってくれた。 ……逃げるのに必死になっていたから、男性の顔をちゃんと見れていなかったことに今さら気付く。 前髪が少し長めの黒髪は、ストレートでサラサラしている。 二重で少し垂れている目元は、優しい印象。 鼻筋もスッと通っていて、唇は薄く、形が良い。 変な意味ではなく、かっこいい人だなと素直に思った。
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