『僕とキーロ』の抵抗

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新谷坂高校は新谷坂山の麓に建っていて町を遠くまで見通せる。 屋上からの景色は、僕の不安とは無関係にいつも通り奇麗で、僕の心を少し落ち着かせた。青々と葉を広げる校庭の桜の木、上から見下ろす紅林邸の白と紺のたたずまいが明るい木々の色によく映える。 「東矢、お前、なんでこうなったかとかクヨクヨ考えてるんだろ。時間の無駄だ。今更後悔しても意味はない。そいつを喜ばせるだけだ。とっとと切り替えろ。何をやって呪われた」 藤友君は僕の心を読みながら、隣でサンドイッチをかじった。藤友君の言葉は僕を現実に引き戻す。 僕は藤友君に昨日の経緯を話す。蛇の怪異に会ったこと、怪異に呪われ、怪異が僕を殺すつもりなこと。サニーさんはキーロさんを逃すつもりがないこと。 藤友君は静かに僕の話を聞いたあと、ためらいもなく言う。 「話は簡単だ、殺される前に殺せ。殺しにきてるやつに遠慮はいらない。さて、どうやって殺すかだな」 僕があの蛇を……殺す? 僕が何かを『殺す』という単語は、妙に現実感がなかった。それにあの恐ろしい蛇を殺せるとも思えなかった。 当然のように『殺す』という単語を出した藤友君に僕は混乱する。 僕のそんな様子に気づいた藤友君は、少し、しまった、というように眉を斜めにして、僕を気遣うように見た。 「悪い、普通『殺す』とは考えないよな……。ただ、聞いた話から、そいつは人を襲う典型的なやつだ。そいつにとってお前はただの餌だ」 そう言って藤友君は自分のかじってたサンドイッチを示す。 「サンドイッチが食うなと話しかけてきても気にせず食うだろ? ……ひょっとしたらお前は違うのかもしれないが」 話しかけられたら食べられない気はする。ただ、藤友君のいうことはわかる。あいつはなん躊躇いも見せずに食べるタイプ。むしろ面白がって。 藤友君の言葉にうなずいて、同意を示す。
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