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「なら、対策をねらなきゃな。弱点はありそうか?」
藤友君が励ますように僕の肩にポンと手を置いた。
「わからない。呪われたせいもあるんだろうけど、僕はにらまれただけで動けなくなった」
「それなら、次に会った時にも動けないと思った方がいいな」
藤友君は右手を口元に当ててじっと考える。
「腕を切り落とすことは……できないか?」
呪いがなければ追えないだろう?、と藤友君は物騒なことを当然のように言う。これ、あれだよね、花子さんの時の藤友君の発想。僕は少し警戒する。
試しだ、といって藤友君は僕の左腕をつかみ、ポケットから取り出したツールナイフの刃を立てて僕の腕に軽く当てる。刃は皮ふのスレスレで何か透明なものに弾かれた。藤友君はさらに刃を鋭角に立てて力を込める。けれどもやはり刃は僕の皮ふに刺さらなかった。
何これ、僕の体、どうなってるの?
藤友君は次はライターを出して僕の左手をつかむ。えっちょっとまって、それ無理っ、と僕は抵抗しようとしたけど、ライターの火は皮ふに当たってもほんのり暖かいくらいで痛くもなんともなかった。
藤友君は、ふぅん? と言って、次に僕の首を絞めようとしたが、やはり皮ふに触れる寸前で何が硬い感触があり、それ以上絞めることはできなかった。鼻と口をふさがれても、微妙なすき間が空くせいか、息苦しさはあっても呼吸ができないことはない。
はぁ、客観的に絵面がやばい、これ。
それに僕からナイフに触って強く握っても、触ってる感覚はあるのに全然切れない。でも、制服の裾は切れた。影響があるのは僕の皮ふスレスレのようだ。
「本当に危害を加えるのは無理そうだな、他の方法を考えないと」
なんだか、僕には全然現実感がない。何が起こっているんだろう。
藤友君は考えながら、独り言のようにつぶやく。
「なにか、武器はないのか? 怪異に効くようなやつ。できれば地雷型のもの。爆弾でも作ってみるか?」
「札ならある」
急に頭の上から声が聞こえた。ぽかぽかと陽のあたる給水タンクの上から黒猫のニヤが見下ろしていた。
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