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「札?」
僕がつぶやいてニヤを見ると、藤友君もつられてタンクの上を見て、少し目を細める。
「あれは味方、でいいのか?」
ニヤは黒猫の姿をしているが、新谷坂山の封印のふただ。僕は4月の終わりに新谷坂の怪異の封印を解いた。その時、新谷坂の封印を守っていたのがニヤで、僕とニヤの意識は少しまじり、お互い意思疎通ができるようになった。
僕は最終的に怪異を全て封印しなおし、ニヤに後を任せたいと思っている。けれどもニヤは現存する封印を守ることには積極的だけど、僕が外に出したものを捕まえるかどうかは興味がなくて、僕が決めればいいと考えている。
だから、協力を求めれば協力してもらえるけれども、そうでなければ自発的な協力はあまり期待できない。ニヤは僕の意思を尊重する。今回は僕が積極的に蛇に関わりにいった。だから僕を尊重して、積極的には助けてくれないはず。
でも、今の発言は。
「味方かな」
「そうか……。その札、というのは蛇にきくのか? それはどういう効果があるんだ? それから、他に何か使えそうなものはあるか?」
藤友君はニヤの声は聞こえていないはずなのに、僕ではなくニヤに向かって直接訪ねる。
「ある程度は効くであろう。札は種類がある。吸収するもの、侵食するもの、崩壊させるもの、反射するもの、いろいろだ。本来は命を削って使用するものだが、蛇が守るならちょうどよかろうよ」
「ある程度は効くみたい。効果は吸収したり、侵食したり? 崩壊させたり、反射したり、いろいろあるって。蛇が僕を守ってるから、今なら負担なく使えるみたい。あとは、もう少し具体的に聞かないとだめかも」
僕はニヤの通訳を続ける。
藤友君はさらに札の詳細と使い方を聞いた。
その結果、札は必ずしも使い勝手がいいものではないことがわかる。
まず僕しか使えない。新谷坂の封印に関連するものだから。
まずはキーロさんを助けられるか、それが問題なんだけど、たとえ僕がどれかの札を使えたとしても、蛇が強大すぎてうまくいかせないだろうというのが藤友君とニヤの共通認識だった。
うまくクリアする方法はないだろうか。藤友君は考えを巡らせる。
僕は結局何の役にもたってない……。
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