『蛇』の獲物

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「ぁ、あ、ぁ、堪ら、ない、我慢、できそうに、ない、な」 「だめよ蛇。キーロが先、でも自殺は困るわ。せっかくの復讐なのに」 私は考える。キーロに自殺されては困る。私がキーロを殺すのでなければ復讐にならない。困ったわ。何よりさっきからキーロは一言も話さない。すでに毒を口に含んでいるなら、毒によっては一瞬でことが済んでしまう。蛇に少年を楽に殺すという選択肢はない。だから少年の選択には乗れない。それなら、話を引き伸ばして、キーロが毒で死ぬより早く蛇が殺すしかない、か? 少年の哀れな懇願は続いている。 「封印、の、せいか、よく、わからぬ、が、2つの呪い、の、反応、のうち、手前、の大き、い、反応、が、客人、で、そこから、1メートル、程、後ろに、いる、のが、キーロ、だ、ろう、よ。体温、で、位置、は、よく、わか、る」 「いつも、通り、手前、に、いる、客人を、毒で、動けなく、して、すぐ、に、後ろ、に、いる、キーロ、を、絞め殺し、て、お前、を、食べ、て、僕は、客人、で、遊ぶ」 蛇の息が荒い。 「真っ暗、だ。キーロに、客人の、様子など、わからぬ、よ。腹、から、締めあげ、れば、毒なぞ、吐き、出す。どう、だ? く、ふ」 「わかったわ。それで構わない」 「ふ、ふ、短か、かった、が、それなり、に、楽し、かった、さに、い」 蛇はそう言って首を伸ばし、少年に毒を吐きかけ、そのまますり抜けて後ろのキーロを全力で締め上げようとしたその時、雷に打たれたような衝撃が走り、わたしの体ごと蛇は痙攣して、動かなくなった。 そして、バタリと人が倒れる音、そしてその後ろから、キーロさん大丈夫!? と叫ぶ少年の声がした。
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