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「ねえ、どうして?……どうしてママに会えないの……」
私の顔がアップになり、大きく見開いた瞳に涙がじわっと盛り上がって…一粒だけ、つつぅーと頬を流れる。
「はーい!カーット!」ディレクターの声が響く。
「瑠美ちゃん、いいねぇ。よかったよ~」褒めてくれた。
泣くのは私の得意技。私が泣くと視聴率が上がるのよ。
「お疲れ~。今日の瑠美ちゃんの出番はもうないから、かえっていいよ~。また次回もがんばってね~」
私はまだ小学生だから、早く終わりになる。もっと遅くまででも平気なんだけどな。
「瑠美ちゃんは泣くシーンで、いつも本当に涙を流しているけれど、どうやったら演技で泣けちゃうの?」
よくインタビューで聞かれる。
「あのね、何かすごく悲しいことを思い浮かべるの」
「例えばどんなこと?」
「えーとね、やっぱり、もしお母さんがいなくなったらどうしようなんて思ったら、めちゃくちゃ悲しくなります」
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