役にたたない探偵

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■■■ それからコンビニ前で合流し、花咲家に五人は向かった。生け垣に囲まれた日本家屋。横開きの戸を開ければ広い玄関がある。 「花咲先輩のおうち、ひさしぶりですね」 「そだね、タマちゃんがまた遊びに来てくれてうれしい」 一年生で花咲と同じように川村からの被害にあっているかもしれないのが玉置理央。小柄で大きな丸い目が可愛らしい女子生徒だ。 この二人はすでに家に来るほど親しいらしい。 「なに、タマも花咲と仲良いの?」 だらしないシャツの着方をしているのが細川。玉置の事が好きらしく、なにかと彼女を気にかけている。 「前に変な人に絡まれてるとこ声かけて、お母さんの迎えが来るまでうちにいてもらったの」 「まじか」 細川は聞いた話に衝撃を受ける。その後ろにいた野田は玄関の靴の数に気づいた。上品な作りの靴が二つ並んでいる。 「なぁ、花咲のおばあちゃん今日家にいんの?」 「今はいないはずだよ。桂木君のおばあちゃんとお茶してるはずで……あれ? 靴があるな。ちゃんとしたやつ」 花咲は気付く。祖母はまだ帰っていないから挨拶不要と言おうとしたはずなのに。 「これ、うちのおばあちゃんの靴だ」 桂木にも見覚えのある靴だった。そして廊下からきびきびとした歩みで花咲祖母が出てくる。 「華、お友達連れてきたの? あら樹君も」 「うん、ちょっと長い話するからクーラーのある場所でしたくて。いい?」 「構いませんよ。応接間は私達が使っているから居間へどうぞ」 「あ、やっぱり桂木君のおばあちゃん来てんだ」 「お店が空いていなかったのよ。もう面談帰りのお母様達でいっぱいでね」 どうやらお店がなかったからと祖母二人は結局家でお喋りする事にしたらしい。花咲祖母孫もよく似ているのかもしれない。後ろから桂木祖母も顔をのぞかせた。 「樹ちゃん、そっちはにぎやかね」 まさか孫が友達連れてクラスメイトの女の子の家に来るとは思わなかったのだろう。桂木祖母は 目を丸くして、そして笑顔で目元を緩ませた。あの事務的な話しかしなかった頃を考えれば、すさまじい進歩であるはずだ。 全体的に和風な花咲家は掃除が行き届いていた。その中、外よりは涼しいが熱気のこもったリビングに向かい、急いでクーラーのスイッチを入れる。 「麦茶いれるねー。お菓子はテーブルにあるものつまんでいいよー」 もてなしなれているのだろう。花咲はすでに出されているグラスに冷蔵庫で冷やした麦茶を注いでいく。 ソファの隣に座った細川が小さく尋ねる。 「桂木、花咲と一緒にいたの? おばあさん同士で仲良いみたいだけど」 「面談で順番が近くて。おばあちゃん同士が意気投合してるんだ」 「郷田にバレたらえらいことになりそうだな。いや、バラすつもりはねーけど」
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