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帰っていいことになった教室だが結局誰も帰らなかった。やはり自分のいないところで犯人扱いはされたくないし、書き込みか始まったからだ。そんな訳で教室に残った十数人が、無言でスマホに触れている。
『財布見つけたらお礼に付き合ってよ』
『あんた郷田でしょ』
ネット上の素早い書き込みとやりとりにリアルでくすくすとした笑い声があった。誰が書いたかわからない、しかし予想はつくこともある書き込みをリアルタイムで見るのが楽しいのだろう。
『そういえば私は手帳なくした。花咲さんの財布とは関係ないかもだけど』
『マジ?』
『でも一週間したら帰ってきたよ。盗まれたとかじゃなくて、誰かが間違って持ってって、それで間違いに気付いて返してくれたのかも』
『それなんか気持ち悪くない?』
『女子はすぐ被害者ぶるよな』
少しばかり無記名チャットルームと教室の空気が悪くなった頃に、その書き込みはあった。
『犯人がわかった。まず細川君の財布を見てほしい。どうして花咲さんの財布のラメがついていない?』
その書き込みを見て、花咲はスマホ片手に立ち上がる。そして細川の席に向かった。いきなりで意味のわからない書き込みだが、確かめなければいけない気がした。
「細川君、もう一回財布見して」
「ああ、うん」
「……本当だ。ラメがついてない。一緒の袋に入ってたはずなのに」
少しでも触れればひっつくラメ。それが一粒も細川の財布にはついていなかった。
しんと教室は静まり返り再び視線はスマホに注目した。
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