三年三組の見えない探偵

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『けれど花咲さんの財布は確かに巾着袋にいれられたという平さんの証言があった。巾着には入っていたはずだ』 『それってどういうこと?』 『大きな袋の中に小さな袋を入れて二重になっているものを想像して欲しい。細川君の財布は普通の大きな巾着袋に入った。そして花咲さんの財布はその内にある小さな袋に入った。そうすれば細川君の財布にラメはつかない』 読んだだけでは意味が理解できず、花咲は黒板に図を書いてみた。いつもの大きな巾着。その中に細川の財布。それと一緒に小さな巾着。その中に花咲の財布。 ラメがつかない理由。それは大きな袋と、その中にある小さな袋の中で分けられてそれぞれ財布が入っていただけだ。しかしどうしてそんな事になっているかがわからない。 『朝、まず細川君が財布を大きな巾着に入れる。次に花咲さんが財布を小さい方の巾着にいれる』 「ちょっと待って、誰もそんな怪しい動きはしていなかったと思う」 リアルで声を上げたのは平だった。すぐさま書き込みがある。 『巾着にいれるのは預ける側で、丹波先生は巾着を広げる。すべての事が大きな巾着の中で行われていたんだ。普通に細川君の財布を入れて花咲さんが財布を入れる直前、先生が小さな巾着の入口を広げる。花咲さんの財布がそっちに入る。そうすれば誰にも見られず二つの財布を別々にできる』 「そっか、それなら丹波先生は袋の入口を変えるだけで、怪しく見えないように財布をわけられる……」 まるで手品のタネのようなことに平は納得する。しかし謎はとけつつあるものの、新たにわかる事があり生徒の中には少しずつ不安が広がった。 「待って、それじゃあ丹波先生が犯人ってこと?」 リアルで湧き上がった言葉は無視するように、書き込みは増えた。 『あとは先生は帰りのホームルームで小さい巾着を引き抜いて金庫に残しておき、大きな巾着をいつも通りに出して、細川君に返す。金庫の中は先生の体で見えないから誰も見てないまま閉められる。それで財布が返ってないと言いに来た花咲さんは勘違いしたってことにして、教室から皆が帰ってから金庫から花咲さんの財布を取り出す。あとは明日にでもなんでもないような顔して【巾着から飛び出て金庫の中にあった】とでも言えばいい』
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