役にたたない探偵

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「不審な人ってのはうまく説明はできないのに不審なのよ。距離感とか視線とか言葉の選び方とか、明らかに普通と違うの」 「なるほど。でも僕からしてみれば川村先輩は普通に見えたけど、花咲さんはどこが不審だと思ったの?」 二人はコンビニにつく。昨日鉢合わせたコンビニだ。あの時の川村は桂木から見てとくに違和感はなかった。郷田から見ればいい雰囲気に見えたほどだ。 「確かにあの時の川村先輩は距離感も会話もおかしくはないよ。ちょっと緊張してる感じはあったけどそれだけ」 「じゃあどこが気持ち悪いの?」 「だからそれがうまく説明できないんだよ。経験値からの判断なんだから」 一体何が気持ち悪いのか悩みながら花咲はアイスを購入した。普通のアイスではなく高価格コーナーにあるものを選んだ。アイスに関しては悩みがない。 釣られて桂木も高価格コーナーから買いそうになるが、お小遣いを考えいつものバー状のアイスを買う。 そしてコンビニ前でアイスを食べだしてから、桂木は誘導するように尋ねた。 「じゃあ川村先輩が君を助けたっていうエピソードを聞かせてよ」 「あ、うん。それはわかる。下校途中に変なのに絡まれているところを助けてもらったの」 「変なのってどういう?」 「歩道を歩いてたらその歩道に大きな車があってね。どう見ても中に何人かがいて、そこで『なんか気持ち悪いな』って思って道を変えたの」 その気持ち悪いという感覚はきっと正しいのだろう。歩道の隣に車がすぐに動かせる状態で止まっていれば誘拐を疑うものだ。 「でもそれから車からぞろぞろ男の人が出て来てね、追いかけられて囲まれて、これヤバいってなった」 「それは……今までで一番ヤバいね」 「うん。究極のヤバい。でもそこに川村先輩が来て助けてくれたの」 終わった話だとしても桂木はぞっとする。確かにその状況から助けられれば気持ち悪くてもお礼はするだろう。 「でも、川村先輩はどう言って助けに入ったの?」 「どうって、『やめろ』ってかんじで」 「声は大きかった? 周りに人はいた?」 「声は普通で、人はいなかったな」  花咲から語られる状況を、桂木は頭の中に思い描く。するとやはりおかしい。そして違和感、花咲の言う『気持ち悪い』がわかったのだった。 「もしかしたら川村先輩とその輩はグルかもしれない」 「え?」
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