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「最初、僕も川村先輩には違和感があったんだ。川村先輩はとても強そうに見えないのに、他の男の集団から君を助けるなんて、って」
恐らくそれは誰もが感じていた違和感だろう。川村はいかにも勉強しかしていなかった容姿をしていて、あらごとには慣れていそうにない。花咲から『助けられた』と説明されたからこそ『そういう事もあるんだな』とは思う。しかし違和感は消えない。
「しかも助ける状況としても厳しいよね。むこうは複数で車もある。近くに目撃者もいない。なら、その輩は諦めたりしないよ。川村先輩を囲んでボコるなり、君を連れていくなりできる」
「そういやそうだ……」
「もしかしたら川村先輩が格闘技の達人かもしれないけど、そんな格闘技を披露するまでもなく輩は立ち去ったんだよね。それはやっぱり輩と川村先輩がグルで、川村先輩が君に恩を売るのを成功させたくてすぐ立ち去っただけじゃないかな」
話せば話すほど桂木は確信する。ずっと感じていた違和感はそれだ。こんなに喧嘩に弱そうなのに、どうして不良をやめろという一言だけで立ち去らせたのか。
答えは簡単、川村と不良はグルだからだ。事前に打ち合わせをして不良は花咲に危機感を与え、そこを川村が助ける。すると花咲は感謝する。お礼をするため一回はデートがてきるかもしれない。
花咲はわなわなと震えてから叫んだ。
「あー! よくあるんだよ。ナンパされてるところを助けてくれる男の人がいて、でもその人が後で『そんなに可愛いとナンパされて大変だね、家まで送ってあげるよ』とか『助けてあげたんだから連絡先教えてよ』っていうやつ!」
「よくあるんだ……」
「正直、グルかどうかはわかんないよ。でも私が感じた違和感はまさにソレだわ!」
やはり経験値からくる『気持ち悪い』という感覚はとても信用できる。とくに目立って事件に巻き込まれやすい花咲の感覚は優れているはずだ。
「じゃあとりあえずした感謝もコーヒーも損じゃん! 詐欺じゃん! しかももう会わつもりないって暗に言ってんのに連絡して来るし!」
花咲は怒る。当然だ。違和感を感じながらも感謝はしていた。ここで無視はしたくないから礼をしたのに、作られた状況だったなんて怒るに決まっている。費やした時間やお金や愛想を返してほしい。
しかも奢ることでもうこれで貸し借りなしとしたのに、まだ連絡を取りに来る。
「……花咲さん、グッチーは見てない?」
「グッチーなら見てるけど」
「そこにまだ残っている書き込みで、川村先輩の事が書き込まれているみたいなんだ。もしかしたら川村先輩は二股をかけようと、二年の玉置さんを狙ってるんじゃないかってのが野田君の推理」
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