役にたたない探偵

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ここで花咲はアイスを食べることも忘れスマホを出しグッチーを開く。管理者である彼女は危険な事はないかとチェックしていたが、そこまで詳しくは見ていなかったのだろう。 「なにこれ、襟糸高校って、川村先輩の事?」 「確証はないけれど、僕もそうだと思っている。何しろ川村先輩は君に近付くために回りくどいことをするほどだ。同じ手口を使って他の女の子に近付いても不思議はない」 「……そういや川村先輩、翔子の事やたら聞いてきた。今学校に来てないですって言ったらタマちゃん……玉置さんの話題を出してた」 「目立つ女の子を狙って恩を売っていたみたいだね」 聞けば聞くほどろくでもない話だった。人を使って自分を良いように演出するという手口で有名な美少女に近付く。ただ好きならばまだ理解はできたかもしれないが、目立つ相手なら誰でも良かったのだろう。バカにされている。 花咲はとけて液体となったアイスを飲むようにして食べる。 「腹立つ! なんか仕返ししたい!」 「まだ決まったわけじゃないよ。証拠はないわけだし」 「……そうだね。それに私より郷田の方が怒りそう」 「あー……」 桂木には簡単にその様子が想像できた。郷田は暴力的と言えるが、その暴力は友人のために使う人間だ。川村をただでさえ気にしていたのに、花咲を侮辱するような男だとしたら確実に殴るかなにかする。それを思うと自分達は冷静になる。 「前もさ、私らが一年の頃かな。当時の三年生に私がセクハラめいた事言ってきて、郷田、キレちゃったのよね。三年生半殺しにしちゃった」 「一年生で三年と戦うなんてすごいね」 「うん。あいつ昔から大きくて、三年の方が小さいくらいだから。まぁ昔から変わんな……くはないか。この間の野田君の時には我慢してたし」 郷田が野田のために陸上部達を殴ろうとした時の話だ。その時は桂木が倒れたから殴る手を止めた。びっくりして止まっただけかもしれないが、それでも珍しい事であるらしい。 多分今回も郷田は怒って暴れる。 「そんなだからさ、今回の事は私が怒んない方がいいよね。むしろ先輩逃げてーってかんじ」 「本当の事は伝えないほうがいい?」 「うーん。さすがに襟糸高校に殴りこみにはいかないだろうけど。あ、でもタマちゃんは大丈夫かな?」 タマちゃんとは玉置の事だろう。交友関係の広い花咲と親しいようだ。彼女も花咲のように騙されていると考えられる。
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