役にたたない探偵

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「知らせた方がいいよ。こういうの、男子の口から言っても僻みに聞こえそうだから、花咲さんが仲いい子なら教えてあげて」 「うん。とりあえず川村先輩に気をつけてって感じで送っとく」 花咲はすいすいと指先を動かしメッセージを送る。するとすぐに返信があった。 「『今細川先輩からその話を聞いてます』だって。これ、細川君も関わってたの?」 「あー……多分野田君がまず細川君に伝えて、細川君が慌てて玉置さんに伝えたんじゃないかな?」 「なんで細川君?」 「細川君が玉置さんに好意があるから。ていうかさっきの玉置さんのことらしきグッチーの書き込みも細川君のものだ、っていうのが野田君の推理」 細かに説明していく。それに時間をかけて花咲は理解をしていく。色恋沙汰なら花咲も得意そうだが意外に鈍いところもあるらしい。 「そっか。細川君タマちゃんと同じ軽音部だっけ。で、野田君はそれを知っていたから書き込みを特定したと。皆結構探偵してんだなー」 「探偵してるって。とにかく推理はだいたいあたってたみたいだ。一度集まって情報まとめたいとこだけど」 「本家探偵の言うことは違うなぁ」 「茶化さないでよ」 探偵とは桂木にとって職業ではなく身についているものだ。なにかしようと思わなくても探ってしまう癖なのかもしれない。だから野田に言われなくてもいつものように『探偵していた』だろう。 「とりあえずさ、三人……いや、多くて五人で集まってみない? うちの家に呼ぶとかで」 「花咲さんち?」 「いつまでもコンビニ前でたむろするわけにもいかんでしょ。川村に見られて対策考えられるのもまずいし。よし、招集かけてこ!」 花咲は再びすいすいと指先を動かして招集をかける。『一度顔合わせて話し合おう! うちクーラーあるよ!』と。クーラーがあるというのはこの時期にありがたい。 しかし桂木は慣れてはきたが花咲のフットワークの軽さに驚いている。異性も含めるクラスメイト数名を家に呼ぶだなんて、なかなかできることではない。桂木だったら家の事情を知られたくなくて適当に理由をつけて呼ばないだろう。 隠し事はあるが素で対応する。だから彼女は魅力的に見えるのだろう。
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