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細川は桂木と花咲が仲がいいことで郷田が嫉妬すると思っているのだろう。それでなくても今回の事件は郷田を怒り狂わないようにするための集まりだ。口外するはずがない。
「にしてもむかつくよな、川村。いっそ郷田に教えてやりたいけど、友達として郷田に暴力振るわせたくねーし」
「そんなに郷田先輩って怖いんですか?」
「あいつは暴力的な正義の味方だから」
「矛盾してますね……」
細川と玉置がそんな話をする。川村はなんとかしたいが郷田はそれで激怒し暴力沙汰になりかねない。それをなんとかしたくて五人で話し合う事にしたのだ。絶対に郷田に知られてはいけない。
「とりあえず、優先順位決めようぜ。一番はこれ以上女子が被害にあわないこと、でいいか?」
言い出しっぺである野田がまず確認をする。それに不安そうにしたのは玉置だった。
「川村先輩はまだ誰か騙そうっていうんですか?」
「んー、翔子もタゲられてたみたいだからね」
「ああ。それに川村もそう人望があるとは思えないのに、あんなに共犯者がいる。標的はもっといると考えられる」
「どういうことです?」
きょとんと返す玉置に順調に状況をまとめていた花咲と野田は答えに困った。彼女は一つ年下。だからか川村の狙いがよくわかっていない。しかしそれを言っていいものか、と思う。こんなに純粋な子にゲスい計画は聞かせたくない。
その心情を察して桂木が代わりに言った。
「川村は仲間を敵役にして自分だけ仲良くなった。普通はそんな敵役なんかやりたくない。なのにそれに従うってのはメリットがあるということだ。例えば引っ掛けた女の子を後で紹介してもらう、とか」
かなりマイルドな表現にして桂木は伝えた。あの川村に無償で従ってくれるような友人がいるはずない。何か従いたくなるような見返りがある。恐らくは、『俺が飽きた女をお前らにやるから協力しろ』とでも言ったのだろう。
玉置はそこまで理解はしていないようだが、納得はできたようだった。
「ホントやんなる。女なんて自分一人で口説けよ。ちゃんとアピる郷田がめちゃくちゃいい男に思えてくる」
「じゃあ花咲が郷田と付き合ってやれよ」
「いい男だから友達でいたいしそのために利用したくないんだよ」
少ししてから野田は花咲に感心した。友達でいたいときっぱり言う、その気持ちを利用しないために距離を置く。それが花咲の考えで、中学生とは思えないほどにしっかりしている。野田は友人として郷田を応援しているが、花咲の考えも支持したいと思えてしまう。
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