役にたたない探偵

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「つまりさぁ、今回はタマも花咲も気付いたからもう狙われないってこと?」 好きな後輩の事が一番気になる細川は早くその事を聞きたい。なので話を戻した。 今回は川村が助けたと勘違いする事がきっかけで起きた。その勘違いさえなくなれば川村に惹かれる要因はないため何も起きない。 「でも、川村先輩ってかなりしつこいです。うっかり連絡先を教えたばっかりにまた次の約束をとろうとするし。『律儀な君は無視なんてしないよね?』的な事も言うし」 玉置はスマホを出してそのやり取りを見せた。数時間前のやりとりでも、川村の恩着せがましい発言が見ることができた。明らかに助けた事で玉置を押し切ろうとしている。 「じゃあ俺が送り迎えとかするし! つうか、なんかあったら俺の名前出したら? 『細川に言われて用事があるので』て断ればいいよ。俺を悪者にしていいから」 上ずった声で細川は言い出す。第三者の名前を出せば本人の性格はとやかく言われなくなるだろう。 『よく言った!』と花咲と野田は思う。好きな相手が困っているなら自分が悪者になってでも助ける。それはなかなかできることではないし、アピールにもなる。玉置もその気持ちには気付くだろうし、実際助かるだろう。 「いいんですか? 細川先輩が川村先輩に恨まれてしまいますよ」 「タマが恨まれるよりはマシだよ。あいつら、怒らせたら何するかわかんないから、断るなら俺の名前使って、なんだったら付き合ってるってことにしてもいいし……」 「……そうさせてもらいます」 自信なさげに言う細川に、赤くなりうつむいて返事をする玉置。それを交互に見た後気を使い視線を外す花咲と野田。いい感じの二人を正直ひやかしたいが、それで二人に距離が空いて川村に付け入られそうなので必死に黙っている。 「花咲も郷田を彼氏って事にしたら? そしたらもう川村も何も言ってこないだろ」 「だから利用したくないんだけど。ま、うまい言い訳は考えとくよ」 花咲も今度から誰かとの予定がすでにあるという事にして川村の誘いは断る。いまのところできることといえばそのくらいだ。 本当なら川村を被害者二人で責めれば解決するのだが、それはできない。逆恨みが怖いからだ。相手はすでに人を集めて犯罪を演じている。それが本当の犯罪にならないとは言い切れない。女子二人の安全のため、男子の名を借りるしかない。 そんな案しか思いつかない桂木は、深くため息をついた。これが探偵ともてはやされていた自分の限界だったとは。探偵に未練はなくても不甲斐なく思う。
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