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「……ん?」
なんだか身体中を、ピリピリと痺れるような感覚が襲ったのだ。
元来、酒は強い方であまり酔うことすらないのだが、今日は旨い酒のせいかだいぶ呑み過ぎてしまったのだろうか?
「……あ、あれ……おかひいな……し、舌もまはははく……」
その痺れはみるみる強くなってゆき、やがて口もきけなくなると、ついには指一本動かすことができなくなってしまう。
「おお、効いてきただな。やっぱりおめえ、鬼だったか……」
すると、そんな私をまじまじと大きな眼で見つめ、村長がなんだか妙なことを言い出した。
「なあ? 我のいう通りであったろう? 我の霊視の前ではすべてお見通しじゃ。一目見た時から鬼の気配がだだ漏れじゃったわい」
また、庵主さまもにんまりと不気味な笑みを浮かべながら、固まった私の顔を覗き込んでそう自慢げに語っている。
お、鬼だとバレていた!? そんなバカな! 今まで一度として正体を悟られたことなどないぞ!?
「う……う、ううぅ……」
信じがたいその事実に私は驚愕するが、口からは驚きの声ではなく苦悶の呻き声しか出ない。
「ハハハ! どうじゃ動けんじゃろう? この酒は村に伝わる〝鬼毒酒〟でな。かの酒呑童子退治で使われたものと同じ醸造法だと聞いておる。人間には無害じゃが、鬼が飲めばたちどころに身体の自由を奪われてしまうのじゃ」
そんな私に高笑いを響かせ、徳利を掲げた寺の和尚がこの状況についてそんな説明をしてくれる。
き、鬼毒酒だと!? あ、あの源頼光が酒呑童子に飲ませ、動けなくなった隙に首を斬り落としたいうあの酒か!? ……クソ! ダメだ。身体がぴくりとも動かない……しかし、なぜバレた!? それに、なんでそんな酒が伝わっている? この村はいったいなんなんだ!?
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