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入館
ようこそいらっしゃいました。
誠にお待ち申し上げておりましたよ。
お会いしたことですか?
勿論、ありませんとも。
お待ちしていたというのはそう……。
この『 糺明館 』の方針のようなものとお思いください。
当館はなにびとも拒まず全てを受け入れ、代価は一切求めません。
要求するのはただ一つ『物語に触れること』で、ございます。
ワタクシはこの館のしがない案内人の一人です。
名前ですか?
いやはや、あなた様に名乗れるような名など持ち合わせておりませんよ。
どうしても、というのであれば『サル』とお呼びください。
ささ、そんなことよりも当館についての説明を述べさせていただきましょう。
先程も少し申し上げた通り、ここにはとある物語が存在しています。それも、伏線入り乱れる一つの物語ではなく、ほんの僅かで完結する極々短き物語達です。
そうしてその物語達は一つ一つが厳重に封印されてございます。
封印は五種。
各封印には六つの物語が隔離されておりまして、それぞれの封印の内容は以下の通りでございます。
【 瞬恐 】
人の恐さが刻まれたシチュエーションホラー。
明記された部分だけでは、意味不明なものが多々あります。
【 瞬楽 】
滑稽さが刻まれたコメディ。
何も考えずにご堪能ください。
【 瞬愛 】
様々な愛の形が刻まれたラブストーリー。
あなた様の眼にはどう映るでしょうか。
【 瞬慄 】
未知の存在への畏怖が刻まれたオカルトホラー。
しっかりと目を開いて対峙してくださいませ。
【 瞬情 】
絆が刻まれたヒューマンドラマ。
想いの力というものを見届けましょう。
ご理解いただけたでしょうか。
おっと、そうしている間に早速最初の物語が解き放たれたようです。
ご覧になってみては如何でしょう。
ワタクシめはここで、あなた様のお帰りをお待ち致しております。全ての物語と出会った後、またお会いしましょう。
それでは、お気をつけて。
……いってらっしゃいませ。
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