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バナナオムレット
バナナは食べれないくせに、バナナオムレットが大好物なんてちょっと変わった人。
「バナナオムレットまた買ってきたの?」
少し不満気な口調で言いながらも、口元がほころんでいる。そんな彼を見つめて可愛いなぁなんて心の声が漏れそうになる。
「一個だけちょうだい」
一個だけ、一個だけと言いながら、食べ終わればまたねだる。6個入りのバナナオムレットは、あっという間に数を減らしていく。
「私がかってきたんだからね!」
彼が好きだから買ってきたのもあるけれど、私だってバナナオムレットが大好きだ。包み込むような甘さ、バナナのちょっとした酸味。どれも合わさって美味しい。
「だって好きなんだもん」
「おっさんが、だもんって……」
「好きなくせに〜」
「好きだよ! そりゃあね」
素直な言葉に彼の耳が真っ赤に染まる。年上のくせに可愛いところがたまらない。バナナオムレットのようにツヤッとまんまるなほっぺたを食べてしまいたい。見つめていれば彼の目が、バナナオムレットへと向けられる。
「そんな目で見たってこれはあげません」
私が買ってきたバナナオムレットを、さも自分の物かのように言って口へと詰め込む。少しくらい落ち着いて食べれないものか。いや、そんなところも好きなんだけどさ。
「私が買ってきたんだけどなぁ?」
「そんな、君にいいお知らせ」
「何さぁ〜?」
「冷蔵庫にバナナケーキあるよ」
「えっ! ほんと?」
「本当」
思いもよらない知らせに、飛び起きる。バタバタと足音を立てながら冷蔵庫へと向かう。冷蔵庫を開ける前に振り返って彼へと告げる。
「じゃあそれ、全部あげる」
バナナケーキ食べれないくせに、私が好きだからって買ってきてくれるんだから。自然と私の口元も緩んでいて、笑みがこぼれ落ちる。冷蔵庫を開ければ、中段に美味しそうなクリームの乗ったバナナケーキが置かれていた。
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