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甘いあまいダイエット
ベルトの上にタプンと乗ったお肉を掴みながら揺らす。最近食べ過ぎてしまったようだ。
年末になるにつれて飲み会の数は増え、仕事は激務へと変化していく。自炊だってここ最近数えるほどしかしていない。カロリーたっぷりの揚げ物たちを、毎日のように食べている。それは、こんなお腹にもなってしまうはずだ。
「かおる?」
「あ、ううん。今行く」
準備の遅い私を待っていたハジメの声に顔を上げて、ニットを着込む。冬は上に着込んでしまうからお肉が見えにくくて助かる。
ノソノソとゆっくり部屋を出れば、コートまで着込んだハジメがタバコを煙らせながら待っていた。
「どうかした?」
「あーうん。ちょっとね」
「太った、とか?」
「気づいてたの?」
恥ずかしくて顔に熱が集まる。パタパタと暑苦しいニットを揺らして、熱を冷ます。
「あはは。可愛くていいと思うんだけど俺は」
「やだ、言ってよ。気にしてるんだから」
「んー、じゃあ今日はヘルシーなご飯でも食べましょうか」
自然と腕を差し出されて、ハジメの腕に腕を絡ませて家を飛び出る。雪は降らないまでも、外は冷え切っていて冬の気配がする。
「あ、帰りはスーパー寄ろうね」
ハジメの唐突な提案に、戸惑いつつも頷く。
お昼ご飯のお店はとても美味しかった。五穀米のもっちりした食感。サバの味噌煮の程よい味付け。副菜のお野菜も、野菜嫌いな私でも美味しいと思えるものだった。
「美味しかったぁ。ありがとう、ハジメ」
「ふふ。多分、かおるは好きだろうなって思ってたんだ」
「すごい好き」
「顔を見てたらわかるって。幸せそうな顔でもぐもぐしてるもん」
「やだ、恥ずかしい」
「いっぱい食べるかおるがすきだよ」
惜しげもなくどこでもかしこでも、愛を囁いてくるハジメに嬉しさ半分、恥ずかしさ半分で顔を隠す。そんな私を見つめながら、喉の奥を震わせて笑うのだ。
「ごちそうさまでした」
手のひらを合わせて、挨拶をする。
「そういうとこもすき」
「やめてよ」
「スーパー寄って帰ろ」
お会計後も自然と手が繋がれる。
「でも、スーパーなんて急にどうしたの?」
「グレープフルーツ」
「あ、すき!」
「ダイエットにいいんだってさ。香りが」
「え、そうなの?」
「うん。だから、毎日食べてもらおうかと思ってさ」
私のことを考えていてくれた嬉しさに、手を握る力が強まる。暖かくて大きい手は私を力強く包み込んでくれる。
「小さいとこらからやって行こうか」
「うん、ありがとう」
「いっぱい食べるかおるが好きだしな」
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