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こたつでまるまるみかん
部屋の中ですら、凍えるような冬が近づいてきた。体を擦って暖めながら部屋へと入る。
「ただいまー」
「おかえり」
帰ってきた言葉の主を見つめれば、こたつで丸まる蜜柑。ぬくぬくと暖かいこたつで幸せそうに微笑んでいる。いたずら心がむくむくと湧き上がって、冷え切った手を首元にズボッと差し込んでやる。
「ひゃあっ、つめたい! ばかばか!」
怒った蜜柑がジタバタと俺の手を抜こうと引っ張ったり叩いたりする。弱々しい力に、つい笑ってしまう。
「俺も入れろー!」
蜜柑を抱きあげて膝の上に座らせる。2人でコタツに無理やり入り込めば、狭い。それはそうだ、2人で入るようには出来ていない。
「せまーい!」
蜜柑がジタバタと嫌がれば、暴れた足が当たって痛い。それでも無理に足を伸ばしてコタツの中へと突っ込む。
「にゃあっ!」
入ってくるなと言わんばかりの鳴き声。刹那、靴下越しに爪先が痛む。
「いって、みーちゃん、中にいんの?」
コタツから抜け出して、布団を捲れば今にも猫パンチを繰り出しそうなみーちゃん。ジトッとした目で俺を責めている。
「あーあ、みーちゃん怒らせちゃったね」
「居るなら居るで先に言えよ! 蜜柑!」
「ねーこはこたつでまるーくなるー」
童謡を歌って蜜柑は、そそくさとベットへと逃げる。目が合ってるみーちゃんは、シャーと唸り始める。
「ごめんって、本当にごめん。俺のことそこまで嫌い? ねぇそんな怒らなくていいじゃん? ね?」
言い訳の言葉をコタツの中のみーちゃんに掛ければ、納得したのかそっぽを向いて丸まる。納得したというより俺の相手をもうしたくないんだろう。
「みかーん……」
蜜柑に悲しげに告げれば、毛布に包まってこちらもそっぽを向いている。
「俺のこと放置……?」
何を言ってもどちらも、俺の方には向いてくれない。
「み、みかんさーん? みーちゃーん?」
寒さに心まで凍りついてしまったようだ。俺の愛しい彼女達は2人とも各々の場所でぬくぬくと暖まっているというのに。
まずは、みーちゃんの機嫌を取ろうと、大好きなおやつを棚から取り出す。布団を捲れば、匂いが伝わったのだろう。少しだけこちらの様子を伺っている。
「みーちゃん、これで許してよ。俺もコタツ入りたい……」
そっと差し出せば、おやつだけ奪われて顔を逸らされる。おやつでもダメか……
肩を落として1人、寒い体を擦り続ける。
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