さくらんぼガール

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さくらんぼガール

注意:女の子同士  私たちは2人でいれば、いつだって無敵だった。怖いものなし。何にも負けない。 「ゆいこ~早く~! 予約に遅れちゃうっ!」 「はいはい、めいちゃん、今行くって~」  私は、グレーのシャツワンピースゆいこはブルーのシャツワンピース。服だってお揃い。2人とも、頭の高い位置で結んだポニーテール。髪ゴムもお揃いのさくらんぼ。 「めいちゃん、今日は楽しい1日にしよーね!」 「もっちろん! 美味しいもの食べて、2人でいっぱい写真もとろっ!」  ぎゅうっと手を繋ぎあって、車に向かって走る。 「ゆいこと、旅行行けるのほんと、楽しみにしてたんだから!」  今日の目的地は、沖縄。あっついー太陽が照らし出す海で、ゆいこと永遠の愛を誓い合う。2人だけで、ちょっとした愛の逃避行だ。 「飛行機乗るのめっちゃ久々!」 「えーそっか。私は、県外の会社とかも受けてたから……」  私たちの道は、来年から2つに別れる。 「ゆいこは、県外に行っちゃうんだもんね〜…今回の旅行が多分、最後だね」 「もーめいちゃん! そんな悲しい顔しないの!」  私が少し悲しい顔をするとゆいこは優しく微笑んで私のほっぺたをつねる。 「今日は2人で目一杯、楽しんで思い出にしよ」 「そうだね! ゆいこと2人で過ごせるの嬉しい」  誰にも言えない内緒の恋愛。2人だけの世界だった。でもそうは言ってられないのは、わかってたよ。 「めいちゃん」  ゆいこが真剣な顔で私を見つめる。ほっぺたをつねっていた手は優しく、頬を撫でている。ゆいこの手にそっと自分の手を重ねる。 「ゆいこ。どしたの?」   ちゅっと、優しく私の唇に、ゆいこの唇が重なる。 「今回で最後だね」  ゆいこの目に涙がふわりふわりと浮かんできて私の視界まで鈍く、濁る。 「これで最後だよ」 「でも、いつまでも私たちは双子だし。いつまでも、めいちゃんが大切な女の子に変わりはないよ」 「私にとっても、1番大切な女の子なことには変わりないよ。ゆいこ」 「めいこ。これで最後だね」  最後だね、と言って最後のキスを繰り返す。この旅行から帰ってきたら私たちは、ただの仲の良い双子の姉妹に戻るのだ。  永遠の愛を誓って、そして、私たちは恋人から姉妹に戻る。覚悟を決めていたはずなのに涙が止まらなくなり2人で嗚咽を漏らす。 「いつまでも、大切な女の子だからね」  ゆいこは私の頬から手を離し、前を見つめた。2人の髪についているさくらんぼを、揺らしながら車が動き出した。
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